ドッペルゲンガーの涙

地下魔法都市ゲフェニア

かつては大都市で、多くの冒険者が足を止め、休憩をとる憩いの都市
この話はそんな街に住んでいる商人と、その商人と出会ったとある剣士のお話です。


スカルという名の商人がゲフェニアに住んでいました。
スカルは貧乏でしたが、性格は優しくて困っている人を放っておけない質でした。
だから貧乏なのかもしれませんが…

ある日、一人の剣士がゲフェニアに立ち寄りました。
身形は普通の剣士でした。
ただ、その剣士は生きてはおらず、この世を彷徨う亡霊だったのです。

その剣士はスカルの所へ行き、一夜の宿を恵んでほしいと言いました。
スカルは快くその剣士を自分の宿へと招き入れました。
一夜と言わず、と言い何日も剣士を泊め、次第に仲良くなっていきました。

ある日、何時ものようにスカルが街に露店を開きに出て数分…
スカルはいきなり倒れてしまいました。
周りに居た人たちは驚きを隠せずパニックに陥ってしまい、気付いた時には息絶えていました。

死因は謎に包まれたまま

実は剣士を羨む限り、人知れず死んでいった亡霊がスカルを呪い殺してしまったのです。
剣士はスカルの死を知り荒れ狂いました。
誰が殺した
スカルを返せ
そう何度も繰り返し呟き、誰彼構わず街の人たちを殺していきました。
自分の仲間が殺したとも知らず、殺して殺して、壊れ過ぎてしまった剣士を警備隊が剣や弓、魔法を用いて止めようとしました。
が、その剣士にはそこら辺にいるモンスターに効く攻撃などで効くはずがありませんでした。

剣士は警備隊を一人残らず殺しました。
誰も居なくなったゲフェニアに一人の剣士が佇む…
何かを探すように辺りを見回しながら

捜し物が見つかったらしく喜色の笑みを見せました。
探していたのはとうに息絶えた人間。

「スカル…」

見つけた死体を剣士は大事そうに抱きかかえ、ある場所へと向かいました。

通りが少し開けたところで剣士はスカルを降ろしました。
そこは何時もスカルが商売をしている所定位置でした。
剣士は隣に座り、物言わぬスカルに色々話しかけました。

反応は、ない

剣士は悲しくなり、その場でずっと涙を流しました。


ある日、パーティーを組んだ冒険者たちが廃墟となったゲフェニアに立ち入りました。
そこには未だあの剣士がおり、その冒険者たちを殺そうとしました。
六人で行ったパーティー。
しかし、生きて帰った者は二人。
生きて帰った者の話によると姿はそこらにいる剣士と見間違うことがないくらいの普通の容姿。
ですが、その強さは計り知れず一瞬で全滅しかけたという…。
普通の容姿ですが普通ではあり得ない力を保持しているその剣士に対し、
皆はとある国の怪談話と似ている為、何時しかドッペルゲンガーと呼ぶようになりました。


ドッペルゲンガーと呼ばれている剣士は、ゲフェニアの街を練り歩き、
時々スカルの処へ行き、ひっそりと涙を流していました。
ドッペルゲンガーはゲフェニアから動かず、偵察に来た冒険者を殺す為に今日も街を練り歩いているそうな......



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